2013.5.25
農薬のお話
先日、こんなニュースがありました。
「EU ミツバチ減少で農薬3種を禁止」(NHKのニュースサイトへリンク)
蜂蜜だけでなく、花や農作物の受粉に必要不可欠な「ミツバチ」が地球規模で消滅しているという事態が起きており、その原因の一つに農作物に使用する「ネオニコチノイド系農薬」が疑われておりました。
それを受けてフランスでは2006年、ドイツ・イタリアでは2008年に、原因と思われるネオニコチノイド系農薬それぞれ数種類を使用禁止としました。
今回のニュースは国単位ではなく、EU加盟国である27カ国全体でネオニコチノイド系農薬3種類の使用を今年12月から禁止するという発表なのであります。
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ハチミツさんたちを殺す、というか消滅させている原因と考えられているネオニコチノイド系農薬ですが、水稲にも使用されているのですね。
お米は穂が出るとカメムシがかじりにくる(正確にはストローのような口でチューチュー吸う)のですが、カメムシがかじったお米は黒い斑点のようなものが付きます。
この「斑点米」が1000粒中、2粒混入しているだけでお米の等級が下がり、ひいては農家の利益がかなり少なくなるので、米農家はカメムシを殺すためにネオニコチノイド系の殺虫剤を散布し、斑点米の発生を防いでいるのです。
※ちなみに斑点米が1000粒中、7粒あるとお米の等級は「規格外」となります
最近ではどの地域のお米も積極的に「減農薬(特別栽培)」に取り組んで農薬の使用をなるべく減らそうとしておりまして、熊本のお米にも「削減対象農薬の使用状況」というシールが貼られ、栽培期間中にどの農薬を何回使用したのかが記されております。
熊本のお米ですと、例えば「ジノテフラン:本田防除:殺虫:1回」と書いてありますが、この「ジノテフラン」こそがネオニコチノイド系農薬なんです。
ということは、水稲への農薬散布はミツバチ消滅に大きな影響を及ぼしている可能性があるんですね。
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使用した農薬の名前と種類、そして使用回数がきちんとお米に記述されているのは、昔に比べて随分進歩したとは思います。
しかし日本のネオニコチノイド系農薬に関する規制はEU諸国と比べて非常に緩く、例えば野菜や果実の殺虫に広く使用されているネオニコチノイド系農薬「アセタミプリド」の残留許容基準値は、EUが0.01ppm以下に規制されているのに対し、日本の規制は500倍の5ppm。
それを加味して考えますと、「ネオニコチノイド系農薬の使用回数はたった一回だけの減農薬米だから、このお米は安全安心です」なんて話も吹っ飛ぶわけですね。
「人間に対して安全だから安全です」なんて口が裂けても言えないわけで。
現在、当店では農薬を一切使用しない農薬不使用のお米、または初期の除草に一度限り除草剤を使用した減農薬のお米の2種類のみ販売しております。
しかし今年度のお米(25年度産)より、無農薬のお米のみを販売することにいたしました。
その理由として、現在当店で販売している特別栽培米の生産者である北野鉄矢さんや緒方孝行さん、井芹政重さん、大津晴男さんが、減農薬から無農薬栽培に切り替えてくださったことで無農薬栽培のお米の入荷量が前年度産よりも多く見込めることと、そしてやはり当店の減農薬米はたった1回の農薬の使用である減農薬中の減農薬であるといえど、「1回の使用と不使用」では人間に対する安全だけでなく、上記のミツバチ消滅問題などの地球環境的にも天と地の差があるわけで、そういったことから「よりグローバルな観点からの持続可能な農業」を目指す我々農業生産法人アソノナカとしましては、無農薬米だけの生産販売がこれからの農業のあるべき姿だと考えたわけです。
当店の仕入れは等級とか一切関係ないので、お米に何粒斑点米が混入してようが仕入れます。
斑点米はできるだけ色彩選別機で弾く予定ですが、それでも少なからず混入する場合があるかと思います。
しかしブンブンかわいいミツバチさんのことを思って、みなさん、我慢して食べてくださいな。
※一応お伝えしておきますが、斑点米が数粒混入したところで食味や安全性には心配ございません。