毛利秀幸さんの無農薬・無施肥栽培のお米。
Drying 掛け干し
ヒノヒカリの「掛け干し」作業、
二人だけではかなり大変。
先日稲刈りした「亀の尾」のほうは倒伏により掛け干しを断念いたしましたが、ヒノヒカリは予定通り全て掛け干しにて自然乾燥いたします。
10月8日。山の上にある毛利さんの田んぼに到着すると、すでにバインダーで3分の1ほど稲を刈り終わっておりました。「ちょっと前までバインダーがヘソ曲げとったばってん、ようやく調子が出てきたみたいです」バインダーとは稲を刈りながら一定量ずつを紐で縛っていく機械なんですけど、紐を使っているせいかとても扱いがシビアで、すぐに紐がもつれたり縛らなくなったりするんですよね。
稲は残りわずか。バインダーはお手伝いにきてくれた先輩の秋山さんに任せ、毛利さんは稲干台の設置に取り掛かります。稲干台は昔は竹で作っておりましたけど、風で倒れやすいんですよね。このアルミ製の稲干台ならぐいっと土に押し込めるためよほどの強風でない限りは倒れそうにありません。
設置も終わり、さてお次は掛け干し作業です。バインダーで刈り取った稲を稲干台に隙間無く稲を掛けていきます。まずは周囲に散らばっている稲を稲干台の周りに集め、それから掛け作業。私も少しお手伝いしましたが、刈ったばかりのまだ乾燥しきれてない稲って結構重いんですよ。それを4〜5束ずつ抱えて稲干台まで持っていくのがまず一苦労です。一輪車もあるんですが、稲刈りした後の田んぼでかなり凸凹なので一輪車も倒れそうになりまっすぐ進みません。やっぱり手で抱えて集めるしかないのです。これ、3人いても大変ですね。私もう帰りますけど、2人で大丈夫ですか?…って、2人とも元・競輪選手でしたね。私の何倍も体力あるんで心配はなさそうです。
掛ける作業は非常に楽しく、根元が縛ってある稲を二つに分けて棒に引っ掛けていくと、どんどん「掛け干し」っぽくなっていきます。
全て掛け終えたら終了……ではなく、これから1週間ほど太陽と風で自然乾燥を行った後は茎と籾を分離する「脱穀」を行い、それからようやく籾すりして袋詰めして終了です。もちろん乾燥している間に風で倒れていないか、乾燥具合はその程度進んでいるのか毎日確認しにくる必要があります。
コンバインで刈り取りと脱穀を行い乾燥機で乾燥させるよりも何十倍も手間がかかる、この「掛け干し」。しかしお米を炊くその時まで一切熱を加えていないその乾燥方法はお米の持つ旨味を存分に引き出し、皆様の舌を満足させるに違いありません。毛利秀幸さんの無農薬・無施肥栽培、天日乾燥の掛け干しヒノヒカリです。
-
バインダーは稲を一定量を紐でまとめながら刈り取っていく便利な機械。しかし紐が絡まったりと難しい一面も。
-
稲を棒に引っ掛けるようにして掛けていく。アルミ製の稲干台は3段あるので1台でかなりの数の稲を掛けられる。
-
1台目の掛け干しが完成したので写真をパチリ。しかしあと3〜4台分ほど残っている。やっぱり掛け干しは大変だ。
Summer 夏
さすがポット苗。温暖な気候と相成って、素晴らしい生育です。
7月25日。暑い。暑すぎる。阿蘇市でも暑かったのに、ここ西原村はさらにもう一段暑いです。こんな日は外で農作業しないほうがいいですね。熱中症で命の危険がありますよ。実際毛利さんも朝から手除草してたそうですが、あまりの暑さにダウン気味。「写真撮りに来られるんで行こうと思ったんですが、ちょっとキツかです」いえいえ、ゆっくり休んでください。
田んぼを見てみますと、やはりポット苗は生育が違います。しっかりとした扇型に開帳した稲は素晴らしい分けつを見せております。当店でもこういう稲を目指しているんですが、マット苗ではなかなかこうはいきません。よーし、来年はうちもポットにするぞー!
Weeding 除草
除草機とレーキ、そして手で除草をきっちり行います。
阿蘇郡西原村は温暖な熊本平野に近いため気温が高く、毛利さんの田んぼがある山中でも阿蘇市や南阿蘇村よりもずいぶん暑いです。その分、稲の生育も良いですが、同時に雑草の生育も抜群であるのが悩ましいところ。初期除草を誤ると、取り返しのつかないほど雑草がはびこってしまいそうです。これは毛利さんは大変ですよ。
しかし毛利さんの除草はキッチリしておりました。まず除草機を何度か掛け、除草できない株間は写真のようなレーキで攪拌し、雑草を引っこ抜いていきます。これで抜けなかった雑草は己の手でもって、完全に除草。写真をご覧の通り、雑草の姿が全くありません。こりゃお見事です!
-
すでに除草機を数回掛けた田んぼで株間を除草する毛利さん。レーキを使うと腰を曲げないでいいのでずいぶん捗る。
-
除草機にレーキに手除草とこまめに除草を行った結果、ご覧の通り、雑草の姿は全く見当たらない。
-
ヒノヒカリの田んぼの水を見にいく毛利さん。この水田の農業用水は山奥から流れてくる新鮮な湧き水だ。
Planting 田植え
中間山地の細長い田んぼは、非常に田植えが難しい。
いよいよ田植えです。ポット方式で作った苗はやっぱり育ちがいいですね〜。種まき機もポット専用なら田植え機もポット専用、ここらではあまり見慣れない3輪の常用タイプを操って田植えを行います。
しっかしここは細長い田んぼばかりですね。山に囲まれた棚田で、景色はとってもいいんですが、田植えはしにくそう。そう思ってたら毛利さんも「うーん、ここはどがん植えればいいんだろか!?」と頭を悩ませ、前進させたりバックさせたりと四苦八苦。こりゃ年々慣れていくしかないですね。
-
苗運びのお手伝いにきてくれた先輩に見守られながら、新品のポット田植え機で田植えを開始。
-
さすがのポット苗。草丈15〜20cm、4.5〜5葉のしっかりとした成苗ができた。実にうらやましい。
-
毛利さんが「ウナギの寝床」と呼ぶ、細長い田んぼ。出口は狭く、中はやや広く、先はやはり狭いため、田植えは難しい。
Seed 種まき
ポット苗で行う、毛利秀幸さんの折衷苗代育苗。
元・競輪選手という異色の経歴を持つ毛利秀幸さん。昔から抱いていた「いつかは農業をやりたい」という想いがとうとう実を結び、今年度より念願の就農を果たしました。普段は熊本市内に住んでおられますが、田んぼは阿蘇郡西原村に借りています。またなんでこんな遠い阿蘇の山の中で米作りを?益城とか菊池とか、自宅からもっと近い米どころもあるでしょうに。
「いえ、僕は阿蘇で農業がやりたかったんですよ」
現役時代、しょっちゅう阿蘇でトレーニングを行っていた毛利さん。阿蘇の山を走り続けるうちにいつしかすっかり魅了され、「農業をやりたい」という夢は「阿蘇で農業をやりたい」と、より具体的になっていったのでした。
そんな毛利さんの米作りですが、育苗は「ポット苗」で行います。苗箱一箱あたりの籾数が30〜40gと少なく、箱の底部分から根が出てきて田んぼの土の養分を吸収し育つので育苗期間を35日〜50日と長くとれるため、通常のマット苗よりも葉数の多い成苗を育てられる方式です。
今日は競輪の先輩にお手伝いをしてもらい、種まきを行います。新品のポット専用種まき機に温湯消毒を行った種籾と山土をセットし、いざ開始。途中、種籾が切れたり土を入れ忘れたりとハプニングがあったものの、無事にヒノヒカリ、亀の尾の種まきが終わりました。苗箱はすぐに田んぼに作った苗代に設置。田植えまでここで育ってていきます。
種まき機、田植え機、トラクターを購入し、満を持しての初めての米作り。稲の無農薬栽培は辛い作業の連続ですが、そこは元・競輪選手、おそらくは並大抵ではない根性とスタミナで乗り越えてゆくことでしょう。
-
お手伝いにきてくれた競輪時代の先輩とともに、ポット専用の種まき機で種を撒いていく。
-
田んぼの一角に作った苗代で育苗を行う。黒い布は苗を移動する際に根を切る「根切りシート」。
-
「曲がっとらんかな」「えーとあと何枚だろ、1、2…」初めての作業に戸惑いながらも、種まきは無事終わった。
生産情報
-
生産者
毛利秀幸
-
生産地
熊本県阿蘇郡西原村河原
-
品種
亀の尾、ヒノヒカリ
-
農薬の使用
なし
-
肥料の使用
なし
-
除草方法
機械除草、手除草
-
種籾の消毒
温湯消毒を実施
-
種籾の入手
亀の尾、ヒノヒカリ、いずれも高島和子さんから自家採種の種籾を入手
-
栽培の履歴
田植え … 2015年6月7日
稲刈り …
亀の尾 / 2015年9月22日
ヒノヒカリ / 2015年10月8日