2021年 阿蘇のなかストア

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阿蘇のなかストアが作る、無農薬・無施肥栽培のお米

令和3年度産、熊本阿蘇産。阿蘇のなかストアが作る、無農薬・無施肥の自然栽培米。

この商品の生産情報

阿蘇のなかストア

生産者

阿蘇のなかストア

品種

ササニシキ、にこまる

生産地

熊本県阿蘇市一の宮町坂梨、宮地、中通

農薬の使用

使用なし

肥料の使用

使用なし

農薬不使用の年数

ササニシキの圃場 / 30年目
にこまるの圃場 / 5〜8年目

化学肥料不使用の年数

ササニシキの圃場 / 30年目
にこまるの圃場 / 5〜8年目

肥料不使用の年数

ササニシキの圃場 / 7年目 ※それまでは有機肥料を使用
にこまるの圃場 / 5〜8年目

今年の米作り

2021年、令和3年度の米作りです。

今年は毎年おなじみの「ササニシキ」、古代米である「緑米」「赤米」に加え、新たに「にこまる」を栽培いたします。

「にこまる」とは西日本で最もメジャーであるヒノヒカリに代わる品種として開発された品種です。ヒノヒカリは美味しいんですが、近年、高温障害による白濁米が問題になってきました。夏〜初夏の気温が高すぎてお米が白くなってしまうんですね。みなさんのお手元に届く際は選別機であらかた弾いてますんで品質には影響はないんですが、弾くお米が多くなると、当然収穫量は減り、儲けは減り・・・。というわけで開発されたのが、高温障害に強い「にこまる」です。

阿蘇は熊本平野部よりもずいぶん気温は低いんですが、それでもエアコンいらずだった私の子ども時代と比べてかなり暑くなってきたのは間違いありません。このままだと高冷地であるはずの阿蘇でも高温障害が問題となるかも・・・というわけで、今回「にこまる」を作ってみることにしました。

事前準備

冬のプラウ耕起

これまで12インチ、深さ約15cmで行ってきたプラウ耕起ですが、今年は16インチで行います。16インチでは最大深さ30cmで耕起できるんですが、さすがにこれは深すぎなので20〜25cm程度に設定します。

プラウ耕起の目的は乾土効果による収量アップもありますが、最大の目的は「クログワイ対策」です。地中奥深くの根茎から伸びてくるクログワイには除草機の効果が弱く、そのため冬季の耕起で根茎を露出させて乾燥させ、枯死させる対策が必要です。
深さ15cmでのプラウではまだ深さが足りないと判断し16インチプラウを導入したのですが、効果はいかほどでしょう。

ちなみにクログワイに最も効果的な対策はサブソイラ+プラウ+暗渠排水です。稲刈り後すぐにサブソイラで耕盤に亀裂を入れて排水を促し、プラウでクログワイ根茎を表面へ露出、暗渠排水でさらに速やかに雨水を排水させます。この最後の暗渠排水が最も重要で、暗渠が施工されている田んぼではサブソイラとプラウにより、それまで大量に繁殖していたクログワイの姿が2年でほぼなくなりました。

プラウでの耕起。

種籾の消毒

3月末にササニシキの種籾の温湯消毒。60℃のお湯に10分浸して病原菌を殺菌し、すぐに水で冷やします。そのまま10日ほど籾を浸水させたら頃合いを見て種まきです。

種籾の温湯消毒。

種まき

一人で種まき

今年もFTTシステム(フレコンで土吊っちゃうよシステム)により一人で種まき。さらに今年は種まきした苗を自動で縦積みしてくれる機械を購入したのでさらに楽になりました。あとは下に落ちた土を自動で上に戻してくれる「箱土供給コンベア」さえあれば完璧なんだが・・・。

種まき。

苗並べ

苗代に苗を並べるのも完全に一人。軽トラに苗箱をフォークリフトで積んで苗代に運び、苗箱運搬・押え用のローラーに積み、一枚一枚並べながら移動していきます。並べ終えたら保温と保湿、鳥害防止用の不織布、芽出し用の有孔ポリをかけて水入れて終了。水を入れた直後は土が硬いので、次の日になってローラーで苗箱を押えて土と密着させます。

苗箱並べ。 ローラーに苗を載せる。

苗が焼けたよね

苗が焼けました、ハイ。

「苗焼け」・・・それは米農家が一度は体験するという、悪夢そのもの。育苗中の水稲の苗はビニールハウスだったり、当店のように苗代に不織布とか有孔ポリだとかで日光を利用して加温・保温して苗を成長させるんですけど、温度が上がりすぎると苗がカラカラになって枯れてしまいます。

なんで、気温が高い日はビニールハウスを開けたり、苗代に水を入れたりして苗の温度を調整するんですけど、もうこれが数時間の世界なんですよ。1時間ビニールハウスを換気するのが遅れたから焼けた、とか。ちなみに当店は朝から農業用水路から水を入れてたんですけど、どっか上流のほうで草刈りしてたんでしょうね、入水口に草が詰まって苗代に水が入ってなかったんです。朝6時に入水口を開けて水が入りだしたのを確認し他の作業へ、その後10時に確認しに行ったらすでに焼けてたという。

下の画像は緑化後間もない時の写真。焼けたらこれが全部真っ茶色に枯れてしまいます。あまりのショックに写真撮ることもできず。

緑化後の苗。

苗が足りない、さぁどうする

焼けた苗はササニシキの苗。今年はササニシキの苗を1500枚ほど作ったんですが、そのうち500枚が焼けました。あぁどうしよ。種を蒔き直すにしても種籾はもうありません。苗をどっかから貰おうにも自然栽培のササニシキの苗が500枚余ってる農家なんてこの銀河には存在しないでしょう。じゃあどうするかというと・・・。

そうだ、疎植しよう

ならば一枚の田んぼに使う苗箱の枚数を減らせばいいんだ!というわけで疎植します。「疎植」とは通常横30cm×20cm程度の間隔に沿って植える苗を30cm×30cmのように間隔を開けて植える方法です。田んぼに苗をどの程度の間隔で植えるかというのは農家個人個人で全く異なり、みなさん色々な経験や知識を元に決定しております。品種や施肥にもよりますが、大体は寒い地方は狭くて、暑い地方は疎植する傾向があります。

というわけで当店の使っているみのるの田植え機の株間ギアを交換し、33cm×17cmから33cm×24cmへ変更。なんとか当初の予定どおりの田んぼにササニシキを植えることができました。

田植えの様子。 田植え前の苗。

除草

今年も3輪の常用除草機で除草したんですが、昨年までの「あめんぼ号」ではなく、キュウホーというメーカーの除草機を使いました。キュウホーは元々は大豆や野菜など畑の除草カルチで有名みたいですけど、その特徴的なレーキを水田に応用し、水田用除草機も作っております。
このキュウホーの除草機は大当たり。レーキで株間の除草を行い、条間は米輪とガス抜きローターという回転式の爪で、牽引式にも関わらず、動力除草機なみに草を練り込んでいきます。

価格は同じ8条タイプだとあめんぼ号の3倍くらいと非常に高価ですが、価格に見合った性能と堅牢さですね。当店は中古で40万円で購入し、5万円くらいかけてアタッチメントを別途購入してみのるの3輪田植え機に装着しております。

もちろんどんな水田でも完璧に除草してくれるわけではなく、ヒエ対策のための深水、クログワイ対策のための冬季乾燥などは必須です。コナギはこの除草機だけでほぼ完全に押さえてくれます。

常用除草機。 除草部分。

稲刈り

ササニシキの稲刈り

ササニシキの稲刈りは2021年10月10日から3日かけて行いました。
この日は稲刈りから苗運びまで一人で作業。曇り空で全く写真映えしない天候だったんですが、一応写真は一枚撮りました。
イノシシに激しく穴を掘がれた田んぼが一枚あったものの、不作だった昨年と比べるとずいぶん収穫量が多く、平均で反(10アール)あたり60kgは多かったですね。もうちょっと雑草を押えることができればもう反収もさらに60kgは増やせそうですが、その"もうちょっと"が難しい・・・。

あと、常用除草機は旋回時に枕の苗を踏んでしまうので、その分減収にはなりますね。当店の作付面積の6haで計算すれば、おそらく30a分は減収となります。これは一人で除草作業する効率が考えれば仕方がないですね。歩行式の除草機は苗を踏まないけど、一人で6haするには時間がかかりすぎて除草が間に合わず、結果、雑草が繁殖して減収するでしょうし。

稲刈りの様子。

にこまるの稲刈り

にこまるの稲刈りは2021年10月25日と26日に行いました。
今年度、初めて「にこまる」を栽培したのですが、無施肥の自然栽培でもぼちぼち収穫量もありました。自然栽培は生産年の天候によって収穫量が大きく異るので一概には比較できませんが、品種特性通りヒノヒカリよりもやや多収の印象でした。
味も結構美味しかったですね。私は家では当店製のササニシキばかり食べているのですが、やはりヒカリ系のもちもちした甘みの強いお米も味わい深いです。

稲刈りの様子。 稲刈りの様子。
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