2015.7.22
またどっか行こうとしている、夏
7月16日。
その日私は一日中、海の上にいました。
話は一ヶ月前に遡ります。
その日いつものようにネットで中古の田植え機を探しておりました。
「うーん、やっぱりポットの田植え機の中古は出てこないなぁ」
ご説明したしましょう。
田植えに使用する苗箱での苗作りには、「マット」と「ポット」の2通りの方式がございます。
マットとポットの違いはいずれ詳しくご説明するとしますが、簡単に言いますとマットは従来の田植機や苗箱が使えるため育苗が比較的安価に行える一方、種の播種量の関係でどうしても成苗、つまり大きな苗が作り辛いという欠点があります。一方のポット苗は専用の田植機に種まき機、一箱500円もするポット専用苗箱と、鞍替えするにはかなりの出費が必要となりますが、マット苗箱に換算すると一箱30gという超少量の他播種量で育苗を行うことができるため、とても健康的な苗を育てることができるのです。
まぁとにかく「ポット方式はとてもいい苗ができる」のです。
そんな理由により、私は米作りを始めた当初よりポット方式で育苗を行いたかったのですが、マットとポットではそれぞれ使用する苗箱も種蒔き機も田植え機も全て違うので、ちょっと簡単にはマット方式から切り替えが出来なかったのですね。しかし「いつかはポット」と思い、ちょくちょくネットでポット関連の農機具の中古情報をチェックしていたのです。
するとある日・・・。
「うおあああおおお!!ポットの田植え機が中古で出てるぞ!!しかも8条!!」
元々マット方式に比べてシェアが低いために、中古も小型の4条か歩行型の2条くらいしか出なかったポット田植え機ですが、なんと8条のポット田植え機が中古で出ているのです。これは即、買うしかありません。よっしゃ、ポチッとな。・・・というわけで念願のポット田植え機をゲットしたのでした。
・・・なんですが、なんと、買った先が北海道なんですね。
「なんでよりによって北海道から買うのよ」ですって?
おっとお嬢さん、いい質問だね。
実は北海道はポット方式のシェアが50%を超える、ポット王国なのです。
なぜ北海道はそんなにポット方式が多いのかはいろいろな理由があるのですが、北海道はその寒さ故、長い期間をかけて成猫を育てるポット方式でなければうまく稲が育たないのが最も大きな理由のようです。
そんなポット王国の北海道は、当然ポット関連の中古農機具もたくさん出ます。というか、6条以上のポット田植え機の中古なんて基本的に北海道以外からは出ないんですよね。なので、たとえ阿蘇からものすんごく遠くとも、北海道から買うしかなかったのです。
で、買ったはいいが、さて、どうやって運ぼう。
普通の田植え機ならともかく、ポットの8条植えなんて横幅が2.8mもあるのでそのままでは運べません。植え付け部と走行部を切り離し、別々に積む必要があります。
試しにいくつかの陸送業者に見積もりをってもらったら、「最低60万かかる」だの、「うちじゃ運べない」だの、「そもそも誰が植え付け部と走行部を分解すんの」だの言われまして、なんだかどうやら運べそうにありません。
うう、どうしよう。
勢いで買ったはいいものの、運べないなんて・・・。
分解できればいいんだけど、いや、分解したとしてもでっかい荷物を北海道から運ぶとしたら結局60万くらいかかっちゃうぞ・・・。
あ、そうだ。
自分で北海道まで取りに行けばいいんじゃん。
自分で分解して載せればいいんじゃん。
そうすりゃ安く済むじゃん。
はぁ〜、こんな画期的なこと思いつくなんて、ホント天才でよかった。
というわけで先方と連絡を取り、いざ出発。
トヨタレンタカーで2tロングのトラックをレンタル。
本当はもっとでかい4tのトラックのほうが確実に積載できるのですが、4tはレンタル料が高いんですよね。あと、私はトラックは基本的に軽トラしか運転したことありませんので、4tを運転するのはぶつけそうで怖いのです。
途中、ホームセンター 「ハンズマン」に立ち寄り結束ロープ購入し、午前10時半に熊本インターより高速に乗りました。
一気に関門海峡を越え、
丹波のSAでとんかつ定食を食べ、
舞鶴のインターで高速をおりて近くの本屋さんで暇つぶしのための小説を購入し、
午後九時、無事に京都の舞鶴港に到着。
こっからフェリーで小樽に向かうのだ!
日付が変わって翌00:30に出航。
これで船の中でダラダラしとけば、21時間後には勝手に小樽に着くってわけです。
トラックドライバーは専用の寝室があり、半個室的な、なかなかの部屋。
つってもこの狭さ。
海上自衛隊に入隊した気分です。
この日は運転で疲れていたため、ビール飲んですぐ熟睡。
フェリー、2日目。9時に起床。
この日は夜9時に小樽に着くまで、ずっとフェリーの中です。
到着まであと12時間あるな・・・。何しよう。
とりあえず船内のレストランでホエー豚丼を食べ、
大浴場に行き風呂に入ったら、もう暇になりました。
そこで昨日本屋に寄って買っといた小説を取り出す。
話題の「鹿の王」。
農作物の田畑を荒らす鹿の生き様を描いたノンフィクション大作です。嘘です。
夜7時になると北海道の陸地が見えてきた!
海から見る夕日は綺麗ですね。
さて、いよいよ小樽に到着。
まずは札幌に移動します。
嫁さんに無事に北海道に着いたとアピールするために、わざわざ時計台へ行って自分撮り。
すすきのあたりの繁華街をトラックで通ってみる。
案の定、超都会だ。
私のような田舎者はきらびやかなネオンを見ると不安になるので、さっさと退散。
このあと、目的地である旭川市まで下道で移動しました。
今日は道の駅あさひかわで寝ることにします。
コンビニで買ったカップラーメンとおつまみを食べながら一人酒。
なんで北海道まできてコンビニ飯食わなきゃいけないんだ。
次の日、早朝から田植え機が置いてある目的の自動車整備工場へ向かいます。
あった、俺のポット田植え機!
つーか、でかっ!!
これトラックに乗るのか?
整備工場の方々の協力の元、後ろの植え付け部分を外し
まずは田植え機本体をトラックに乗せ
4時間かけてなんとか積み込み完了!
よーし、阿蘇まで帰るぞ!
けどフェリー出航まであと8時間くらいあるな。
よし、観光がてら富良野経由で小樽まで戻ろうっと。
道中、気になるのはやっぱり田んぼ。
観察すると一枚の面積は平均30aくらい、大きな田んぼでも一枚1haくらいなもんで、意外にもそう大きな圃場ではなさそう。
しかし、畑の面積がとにかくでかい!!
上の写真はネギ畑なんですが、一枚が5haくらいあります。
他の田んぼも運転中に見たくらいでは何植えてるのかわかりませんが、一枚数haくらいの大きな圃場ばかりで、やはり北海道はでっかいどうなんだな、と妙に納得次第でございます。
あとですね、驚いた点として、和風建築の家が全くないんですよね。
別に全棟ログハウスってわけでもないんですが、瓦屋根の家なんて全然見かけない。
たまにあったと思ったら寺か神社ですもんね。
景色の良さも相成って、まるで外国にきた気分になります。
美瑛町をいろいろ観光しようかなと思ったんですが、田植え機乗せたトラックでウロウロするのも危ないので、とりあえず富良野まで行き、ラベンダー畑を観光。
おー、綺麗だねぇ。
お、リフトで上まで行けるみたいだぞ。
これは乗るしかない!
男一人、作業着姿で観光地のリフトに乗る。
楽しいぜ。
上までくると、さすがの見晴らし。
近くにそびえる連山に裾野に広がる平野。
ちょっと阿蘇谷に似てますね。
おばちゃんたちに写真撮ってと頼まれたので、それならと私も一枚撮ってもらいました。ラベンダー畑で一人で写真を撮る作業着姿の薄汚れた男。たぶんおばちゃんたちは「こいつは何もんなんだ」と思ってたでしょうね。
その後滝を見て、
小樽のイオンでお土産を買い、
京都に向かって出航。
すぐに就寝しました。
次の日。
台風が近づいていることもあり、朝から雨。
昼にカツカレーを食べて
寝室で寝ながら「鹿の王」下巻を熟読。
トウモロコシ畑を荒らしに荒らした鹿の王ですが、いよいよ地元の猟友会の追っ手が差し迫ります。離れ離れになる仲間たち。迫る電柵。放たれた銃弾。さぁどうなるのでしょうか。嘘です。
夕飯時、「そういや北海道に行ったのに海鮮を一切れも食べてないな」と思いつき、レストランでミニ海鮮丼をチョイス。
「さっぱりとした海鮮丼に唐揚げが嬉しい。うん、この豚汁もいい味が出てるじゃないか」などと「孤独のグルメ」のように一人孤独にフェリー飯を味わいます。
夜9時に下船。
まだ時間あるし眠くないから広島まで走っとこう。
この日は広島の福山SAで就寝。
朝。
日曜日のためか既に車が多い。
この日は阿蘇までノンストップで走りました。
田植え機を下ろし、レンタカー屋さんに到着。
走行距離は2099.4km。
ほとんどフェリーの上だったので、北海道に行った割にはあまり走りませんでしたね。
次の日、田植え機に植え付け部を装着。
これでこの田植え機の旅は完全に終了です。
去年は岡山まで除草機を取りに行き、今年は北海道まで田植え機を取りに行きました。
来年はソマリアあたりまでトラクターを取りに行きそうな予感がします。